【早見表付き】転職・離職etc. iDeCoをスムーズに持ち運ぶ方法
今後、ひとつの会社に勤めるという働き方は減っていくものと思われます。そして、そんな働き方にピッタリな老後資産づくりができるのがiDeCo(イデコ)。
ただし、転職などをした際には手続きが必要です。手続きというと、加入する際、会社に証明書をお願いしたら迷惑がられた……なんていう方もあったのではないでしょうか?法令にも定められたことなので遠慮する必要はないのですが、いやな気持にならず、スムーズに持ち運びする方法を説明していきます。
※以下に掲載の内容は2021年9月までの情報になります。
目次
1. iDeCoは転職・退職しても持ち運びできるけど、転職先によっては加入が継続できないことも
確定拠出年金の制度には、iDeCoと企業型確定拠出年金(以下企業型)の2種類があります。
企業型はその会社の制度なので、そこに勤めている方が入ることになります。企業型に加入する場合の多くは、iDeCoで積み立てを継続する加入資格を失うことになります。
まずは自分のケースがiDeCoに加入し続けられるかを確認してみましょう。
あなたはどれに当てはまる? 手続き早見表で確認!
● 企業型に移換する
iDeCoから新しく作られる企業型の口座に資産を移します。移す際にはいったん売却され、企業型で用意されている運用商品で運用をすることになります。この場合のメリットは2つあり、口座管理料がかからず、一つの口座で管理できます。企業型の商品ラインナップが嫌でなければ、こちらがおススメです。
● iDeCoにそのまま置いて運用を継続する
iDeCoの口座で、積立しない場合の口座料を負担しながら、資産の運用を継続します。売買による機会損失などの不安はありませんが、企業型の口座とiDeCoの口座の管理と、口座料が負担となります。
2. 転職によって、iDeCoの掛け金が変わる! 転職(就職、離職)後のあなたの掛け金はいくら?
加入した時に調べたと思いますが、iDeCoは職業や、勤め先企業の年金制度によって、掛け金の上限が異なります。今回、転職などをされると、掛け金の上限が従来と変わる可能性があります。下記の表で、掛け金の上限を改めて確認してみましょう。
掛け金早見表
職業 | 掛け金上限 | |
---|---|---|
会社員(確定給付企業年金のみに加入している場合、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金の両方に加入している場合) | 月額1万2000円 年額14万4000円 |
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会社員(企業型確定拠出年金のみに加入している場合) | 月額2万円 年額24万円 |
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会社員(確定給付企業年金や企業型確定拠出年金がない場合) | 月額2万3000円 年額27万6000円 |
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公務員 | 月額1万2000円 年額14万4000円 |
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自営業者 | 月額6万8000円 年額81万6000円 |
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専業主婦(夫) | 月額2万3000円 年額27万6000円 |
転職等によって、掛け金の上限が変わった方もいらっしゃると思います。ちなみに、下限は、毎月5000円、金額は1000円単位で決めることができ、年1回変更も可能です。転職等で収入や場合によっては支出が変わることもあるかと思いますので、これを機会に改めて掛け金の見直しを考えてみましょう。
3. 移換する際の手続きは?転職先ごとの手続き内容と方法
ご自身が、そのままiDeCoに加入継続できるのか、掛け金を変える必要があるのかわかったところで、ここからは、実際の手続きついて、転職先ごとに解説していきます。
『パターン1』早見表①③④の方:
勤務先の更新手続きが必要。被保険者種別や掛け金額が変わる場合は届け出を。
あなたの掛金上限額を証明してくれるのは、勤務先です。ここが変わるのですから、その変更届と新しい勤務先に作成してもらった掛金上限額の証明書の提出は必ず必要です。住所が変わった場合には届け出ないと、掛け金の所得控除を行うのに必要な書類が受け取れなくなるなど不都合が起きますから、こちらも忘れずに届出てください。
届け出る 内容 |
解説 |
---|---|
勤務先の変更 <必須> |
転職した先でサラリーマンとして働く場合、新たな勤務先の届け出とそこで作成してもらった証明書を提出します。会社に証明書をお願いするストレスを減らす方法は<手続きポイント>を参照ください。 【提出書類】 |
国民年金の被保険者種別の変更 |
会社員、公務員、自営業、専業主婦などの種類によって、国民年金の被保険者種別が異なります。変更があった場合、提出が必要です。 【提出書類】 |
掛け金額の変更 | 【提出書類】 加入者掛金額変更届(第2号被保険者用) |
住所変更 | 【提出書類】 加入者等氏名・住所変更届 |
手続きポイント
会社に証明書の作成を依頼するストレスを減らす方法
国民年金基金連合会のHPに事業主に協力いただく必要があることがまとめられた『「事業主の皆さまへ」概要ご案内パンフレット』があります。これをダウンロードして「事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書」と一緒に勤務先に提出すれば、事業所がやらなければならないこと、事業主専用コールセンターの電話番号も載っていますのでスムーズに手続きが進むと思います。
提出書類の入手方法
契約している運営管理機関のコールセンターに連絡をすれば、オペレーターがあなたの事情を聞き取りながら必要書類を判断し、取り揃えて送ってくれますから積極的に利用しましょう。国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトからもダウンロードできます。
『パターン2』早見表②の方:
iDeCoの加入資格を喪失することになったら、まずはそれを届け出るところから。
iDeCoの加入資格喪失を届け出る手続きは必須、資産を企業型へ移換する場合はその手続きも必要です。移換手続きは、企業型の担当者に現在iDeCoに加入していることを伝えれば必要書類を用意してくれます。企業型への加入手続きは勤務先により異なりますので担当者の方の指示に従って進めてください。
届け出る 内容 |
解説 |
---|---|
iDeCoの加入資格喪失を届出 <必須> |
転職先へ入社し企業型へ加入する日、つまりiDeCoの加入資格を喪失する日が決まったら、iDeCoの加入資格喪失届を提出します。 【提出書類】 |
iDeCoの資産を企業型へ移換 |
iDeCoの資産を企業型へ移すには依頼書を会社に提出します。 【提出書類】 |
企業型DC加入 企業型の運用指図 <必須> |
転職先の企業型担当者から制度や商品とともに、加入時の手続きについても説明がありますから、その指示に従ってください。 会社が掛け金を出す前に登録手続きが完了している必要があるので期日が割と早いかもしれませんが、必ず守るようにしましょう。 |
手続きポイント
資産移換前に投資信託は自分で売却
資産を移すために日本ではいったん現金化が必要なため、iDeCoで保有していた投資信託などの金融商品は事務的に売却されます。投資信託は売却のタイミングで資産額が異なりますので、自分でタイミングを決めたい場合には「個人別資産移換依頼書」を提出する前またはその直後にスマホなどを使って指示を出してください。
※注意 企業型DC規約でiDeCoへの加入を認めている場合は、移換せずにiDeCoを加入(積み立て)継続する事も可能。iDeCoと企業型に同時加入する場合は、資産移換は不要ですが『パターン1』の手続きは必要です。
※法改正で2022年から同時加入要件が緩和されます。詳しくは関連記事をご確認ください。
『パターン3』早見表⑤⑥の方:
国民年金の被保険者種別の変更が必ず必要。掛け金が上限を超えていたらその変更も忘れずに。
iDeCoに引き続き加入が可能ですが、会社員から退職して独立、あるいは専業主婦(夫)になるなど、国民年金の被保険者種別が変わることになりますから届出てください。これを忘れると掛け金の引き落としが止められてしまいます。また、掛け金の上限が変わり、上限を超えている場合には掛け金額の変更も行ってください。住所などその他も変更がある場合には届出をします。
届け出る 内容 |
解説 |
---|---|
国民年金の被保険者種別の変更 <必須> |
会社員、公務員、自営業、専業主婦などの種類によって、国民年金の被保険者種別が異なります。変更があった場合、提出が必要です。 【提出書類】 |
掛け金額の変更 | 【提出書類】 加入者掛金額変更届(第2号被保険者用) |
住所変更 | 【提出書類】 加入者等氏名・住所変更届 |
提出書類の入手方法
契約している運営管理機関のコールセンターに連絡をすれば、オペレーターがあなたの事情を聞き取りながら必要書類を判断し、取り揃えて送ってくれますから積極的に利用しましょう。国民年金基金連合会のiDeCo公式サイトからもダウンロードできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
iDeCoはご自身のケースに合った手続きさえ行えば働き方によらず老後資産づくりを継続することできます。人生100年、長い老後への備えは一気には用意できません。来年以降手続きは徐々に電子化し、法改正によって2022年からiDeCoに加入できる要件が緩和されより一層使いやすくなります。ぜひiDeCoを大いに活用して安心の老後を手に入れましょう。
この記事のポイント
- 転職・起業・独立などケースごとに届け出が必要
- 届け出を怠ると税メリットを受けられなくことも
- 契約先金融機関のコールセンターは頼りになるので大いに活用する
オフィス・リベルタス取締役。大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、25万人の投資教育も主導。確定拠出年金教育協会の理事として、月間20万人以上が利用するサイト「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及・活用のための活動も行っている。