iDeCo(イデコ)との
上手で賢い付き合い方

20代のためのやさしいiDeCoの始め方

20代のためのやさしいiDeCoの始め方

公開日: 2020年10月27日
氏家 祥美

氏家 祥美 /
ファイナンシャルプランナー

ニュースなどで「老後資金2000万円問題」「人生100年時代」といった言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。老後はまだまだ先の20代だからこそ、まずは小さな金額でコツコツ始められる資産形成が向いています。節税効果もあるiDeCoの始め方をやさしく解説していきます。

1. 20代からiDeCoを始めたほうがいい理由を解説

老後資金準備は、20代で始めるのと40代で始めるのとどちらがいいでしょうか?

20代で始めれば約40年間の準備期間がありますが、40代で始めれば約20年間の準備期間しかありません。同じ金額を貯める場合、準備期間が長い方が1ヶ月あたりの貯蓄額が少なくて済むので、家計の負担感をあまり感じずに貯められます。

メリットはそれだけではありません。運用期間が長いほうが運用の効果も期待できます。

仮に1000万円を貯めようとした場合、利回りが0%ならば、運用期間が40年(480ヵ月)ある場合、1ヶ月あたりの貯蓄額は、2万833円になります。20年(240ヵ月)の場合には、4万1666円です。

しかし、運用期間中3%で運用できたとすると、1ヶ月あたりの必要積立額は大きく変わります。運用期間が40年ある場合には毎月1万800円、運用期間が20年の場合には毎月3万400円となります。

若いうちに少額からでも積立投資を始めて、時間を味方に運用をしていくと、月々の負担を減らして目標を実現しやすくなります。

2. 「そもそもiDeCoって何!?」を基礎から解説

「iDeCo」の文字を見かけたり、「イデコ」という言葉を聞いたりしたことはあるでしょう。テレビコマーシャルやネット広告などでもよく見かけるこの言葉ですが、実はよくわからない……という人も多いのではないでしょうか。

ずばりiDeCoとは?

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のこと。自分で老後資金を準備する年金制度です。加入者が毎月一定の金額を積み立てて、投資信託・定期預金・保険などの金融商品で運用します。60歳になるまで途中引き出しができないことには注意が必要ですが、掛け金が所得控除になるなど、拠出時、運用時、受取時にそれぞれ税制優遇のメリットがあります。

よく聞く「つみたてNISA」とどう違う?

税制優遇を受けられる積立投資というと、iDeCoのほかにも「つみたてNISA」があります。とても混同しやすいこれらの制度ですが、こんな違いがあります。

iDeCoとつみたてNISAの比較表

iDeCo つみたてNISA
1年間の投資可能額
1年間の投資可能額 職業等によって異なる
会社員:14.4万円~27.6万円
公務員:14.4万円
専業主婦・主夫:27.6万円
自営業者:81.6万円
40万円
積立できる最大期間
積立できる最大期間 60歳まで※(運用は70歳まで可能) 20年間
非課税総額
非課税総額 職業等によって異なる 800万円
投資対象
投資対象 定期預金、保険、投資信託等 金融庁によって選ばれた株式投資信託、ETF
加入できる年齢
加入できる年齢 20歳以上60歳※未満 20歳以上
節税メリット
節税メリット 掛け金が全額所得控除
運用益が非課税
受取時にも控除有り
運用益が非課税
売却
売却 60歳まで出金不可 自由にできる

※法改正によって、2022年からは国民年金被保険者であることを前提に65歳まで延長される。

つみたてNISAのメリットは、途中引き出しができることです。そのため、運用した資金を、老後を待たずに引き出して使うこともできます。ライフスタイルや働き方の変化にも柔軟に対応しやすいので気軽に始めやすいと言えるでしょう。

iDeCoのメリットは、節税メリットが大きいことです。老後資金の準備をより効率的に行いたいと思ったら、iDeCoの非課税枠をフル活用したほうがいいでしょう。

iDeCoで積み立てをすると、どんなメリットが?

iDeCoの節税メリットについてもう少し詳しく解説しましょう。iDeCoでは、掛け金の拠出時、運用中、受取時の3つのタイミングで税制の優遇が受けられます。

まず拠出時ですが、掛け金として拠出した全額が所得控除扱いとなります。通常、所得には所得税と住民税がかかりますが、iDeCoに拠出した掛け金分はその年の所得から「無かったもの」として差し引かれるため、その金額については所得税や住民税がかかりません。

運用中には、運用で得た定期預金の利息や投資信託の運用益・配当金が非課税扱いになります。一般的な投資や預貯金では毎年20%の税金が差し引かれるところですが、iDeCo口座を使うと途中で税金が引かれない分、より効率的に運用できます。

受取時にも非課税枠があります。iDeCoは、一時金、年金、一時金と年金の併用と3つの方法から受け取り方を選べます。一時金受け取りの場合には退職一時金の非課税枠、年金受け取りの場合には公的年金の非課税枠を活用できます。

3. 実際の始め方は?具体的手続きを解説

iDeCoを始めたいと思ったら、最初にiDeCo専用口座を開設しましょう。iDeCoはネット証券、証券会社の店頭、銀行、信用金庫、郵便局……とさまざまな金融機関で取り扱われています。

iDeCoを始めたいと思ったら

iDeCoの口座を置く金融機関を決める

iDeCoは、老後資金を準備するためのものなので、iDeCo口座とは長い付き合いになります。長く付き合っていきたいと思える金融機関で口座を開くようにしましょう。選ぶポイントは大きく3つあります。

(1)商品の品ぞろえ

iDeCo口座を開いた後は、その金融機関で取り扱っている商品の中から、商品を選ぶことになります。商品の品ぞろえは金融機関ごとに異なります。口座を開く前にどんな商品が売られているのか、自分が買いたい商品が取り扱いされているのかを確認しておきましょう。

(2)手数料

iDeCo口座を開くと、毎月手数料がかかります。長期間の資産形成では投資額から差し引かれるコストが運用結果に影響を与えます。運営管理機関に支払う口座管理手数料は金融機関ごとに差が出るポイントなので事前に確認しておきましょう。

(3)窓口やコールセンター、ウェブサイトの充実度

口座開設や商品選びで相談をしたいときに、頼れるのが窓口やコールセンターの存在です。
対面で相談しながら選びたい、ウェブで比較しながら選びたいなど、ニーズに合った情報提供がされているでしょうか。複数社比較して、より分かりやすく親切な方を選びたいものです。

申し込み書類を取り寄せて記入し返送する

金融機関から「個人型年金加入申込書」を取り寄せて、必要事項を記入・捺印します。会社員や公務員など厚生年金の被保険者は、勤務先に「事業主の証明書」に記入してもらう必要があります。必要書類を揃えて、金融機関に返送しましょう。

手続き完了の案内が届き、引き落としスタート

書類を返送後、無事に審査が完了すると、「個人型年金加入確認通知書」「口座開設のお知らせ」「コールセンター/インターネットパスワード設定のお知らせ」が郵送されてきます。書類の提出から1~2ヵ月がかかります。
その後指定口座から掛け金の引き落としが始まります。

まとめ

20代からiDeCoを始めれば、運用期間が長くなる分、運用の効果が期待できます。これから様々なライフイベントがやってくる20代は、貯蓄も確保しておきたい世代です。まずは無理のない金額でiDeCoを始め、少しずつ増額していくといいでしょう。

この記事のポイント

  • 20代でiDeCoを始めると運用期間が長い分運用効果が高まる
  • iDeCoは途中引き出しできないが、つみたてNISAよりも節税効果が大きい
  • 品ぞろえと手数料、サービスに注目して、長く付き合える口座を選ぼう
氏家 祥美

氏家 祥美(うじいえ よしみ)

ファイナンシャルプランナー

ハートマネー代表。お茶の水女子大学大学院修了。2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち、2010年よりFP事務所ハートマネー代表となる。「幸福度の高い家計づくり」をモットーに、子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持つ。